研究テーマ
非線形領域における車両の安定性解析
急旋回をするときのように車両が大きな加速度をもって運動するとき，車両は非線形的な挙動を示します．事故防止の面から，このような状態における車両の安定性を評価することは非常に重要です．しかし，非線形システムの安定性解析は線形システムの安定性解析とは大きく異なり，非常に難しくなります．
ここでは車両を最も不安定な状態に陥れる最悪入力を用いて安定性を評価する方法を検討しています．この方法では，まず車両の横すべり角を最も大きくするような操舵入力パターンとブレーキ入力パターンの組み合わせを最悪であると考えます．そして，このような最悪入力を求める問題を一種の最適制御問題として定式化し，その解を数値的に求めます．指定された入力範囲の中では，このようにして求められた最悪入力以上に車両を不安定にする入力は存在しないので，最悪入力に対する車両の応答によって安定性が評価できます．
下のグラフは求められた最悪入力に対する車両の応答と，車両の安定性評価によく用いられるJターン入力に対する応答を比較したものです．Jターン入力では車両は安定状態を保っていますが，最悪入力を用いた場合は横すべり角が発散し，不安定状態に陥っていることがわかります．
この結果から，入力の範囲が同じでも入力のパターンによっては車両が不安定になる場合があることが予測できます．このような入力に対しても安定を保てるような車両運動制御系を設計することが次の課題です．
関連する論文
- 雨宮健，堀内伸一郎，最悪入力を用いた車両の有界入出力安定性解析，自動車技術会論文集，Vol. 36, No. 3,115-120, 2005.
- Amemiya, K. and S. Horiuchi, Bounded-Input Bounded-Output Stability Analysis of Vehicles using Worst-Case Input, Review of Automotive Engineering, Vol. 26, No. 2, 177-184, 2005.
