充填層透過流動現象の圧力損失予測 -修正Ergun式の提案-本文へジャンプ

【研究背景】
 静止した多数の粒子の集合体である静止粒子充填層の内部を流体が通過する現象を充填層透過流動現象と呼んでいます。工場や火力発電所などで発生する排ガス中のダスト捕集・処理,ダイオキシン類の吸着除去,および下水道施設における汚臭処理などの化学工業分野から,土壌の透水現象,および天然ガスの流動などの自然科学分野に至るまで,充填層透過流動現象の適用範囲は極めて広いです。この粒子充填層内を流体が流れる時の流速と圧力損失との関係を知ることは,極めて重要であります。充填層透過流動現象における圧力損失計算式のひとつにErgun式があります。しかし,この式は層流域から乱流域までを含めた適用範囲の広い式であり,古くからよく知られ用いられているものの,条件により誤差が生じることもよく知られています。そのため修正Ergun式が多数提案されていますが,適用範囲が狭く,精度が悪く,あまり実用的とは言い難いです。そこで,適用範囲が広く,精度の高い式を作成することを行いました。

【研究結果】
 新たに粒子物性値として,「直線率」を定義しました。これは粒子の2次元画像を取り,その外形において周長に対する直線長さの割合です。この直線部により,粒子同士が点接触ではなく面接触し,流体と粒子との接触面積が減少し,これがErgun式の計算条件と異なり,誤差となると考えたからです。この直線率をErgun式に導入し,さらに他学者による壁面付近の空隙率の影響の研究成果を用い,新たに修正Ergun式を提案しました。そして,修正Ergun式による計算値と実験値(7種の粒子および4種の管内径)との比較を行いました。結果として,この修正Ergun式を用いることで各種粒子形状(球・円柱・円盤・楕円・カプセルなど)および流体速度,管内径に対し,広い範囲で±6%の誤差範囲内に収まることがわかりました。
 また,この式および実験結果を追加で行い,充填層内の圧力損失変化ならびに充填層長さに対する一定値と仮定したときの圧力損失計算誤差を明らかにしました。

実験装置

 

                           供試粒子

【研究論文】
河府賢治、越智光昭、武居昌宏
粒子直線率および壁面効果による修正Ergun式の提案
粉体工学会会誌 Vol.44, No.4, pp.259-266 (2007)

河府賢治、越智光昭、武居昌宏
圧力損失中間計算法の充填層長さに対する適用性
粉体工学会会誌 Vol.44, No.5, pp.353-360 (2007)

【特許】
発明の名称 :圧力損失推定法、圧力損失検出装置及び粒子輸送システム
発明者    :河府賢治、越智光昭、武居昌宏
出願番号   :特願2006-351679
出願日    :平成18年12月27日
特許出願人 :学校法人日本大学
代理人    :森哲也

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