4.研究でわかったこと?


制御シミュレーション
 アクティブサスペンションを用いて乗り心地の向上つまり弾性車体の振動を低減させることを制御系設計の目的としている.アクティブサスペンションによる制御は,準最適制御と出力フィードバック型H∞制御を用いている.この2種類の制御を用いた理由として状態量を観測することができないため,出力をフィードバックするタイプの制御理論を適用した.
 準最適制御は,比較的簡単な制御で重みの調節が容易である.しかし,安定が保証されているわけではない.そこで,安定性,ロバスト性として出力フィードバック型H∞制御を適用した.この2種類の制御比較し,検討する.
 次にH∞制御のブロック線図を示す.

 ここでH∞制御理論について簡単に説明すると,このブロック線図が弾性車両のシステムである.W1はモデル化誤差に伴うスピルオーバ回避を目的としたハイパスフィルター.さらにボディとばね下質量の感度低減問題の重み関数として,ローパスフィルターW2とバンドパスフィルターW3を用いている.
各フィルターの形状は下記グラフようになっている.
これらのフィルタよりH∞制御のフィードバックゲインを設計している.


●準最適制御の制御シミュレーション結果
準最適制御の制御シミュレーション結果を示す.上が周波数応答,下が時刻暦応答である.

 周波数応答は、4輪同時加振し,剛体要素1で観測したものである.青いラインが非制御で,赤いラインが制御時の周波数応答である.このグラフから,バウンシング・柔軟曲げモードともに,振動ピークが低減されていることがわかる.
 この時刻暦応答は,各振動モードの5Hzと14Hzで加振したものである.5秒〜15秒が過渡的な応答で徐々に外乱の振幅を大きくしている.その後,定常振幅している.
双方ともに,非制御に比べて制御時の方が振幅が抑制されており良好な制御結果が得られていることがわかる.

●H∞制御の制御シミュレーション結果
次に,H∞制御の制御シミュレーション結果を示す.上が周波数応答,下が時刻暦応答である.

 この周波数応答は先ほどの周波数応答と同様の入力である.青いラインが非制御時,赤いラインが制御時の周波数応答である.バウンシング・柔軟曲げモードともに,振動ピークが低減されていることがわかる.
 次に先ほどの準最適制御と同様の時刻暦応答について示す.双方ともに,非制御に比べて制御時の方が振幅が抑制されており良好な制御結果が得られていることがわかる.
制御実験の概略図


外乱信号は,シグナルジェネレータで加振信号をだして,加振器を揺らして外乱としています.コントローラとして,各観測ポイントのセンサからの信号をA/Dボードを通って制御PCへと入力されます.制御PCで,シミュレーションで算出したフィードバックゲインを用いで制御信号を計算させています.その制御信号をD/Aボードを通ってアクティブサスペンションのアクチュエータへと入力されていきます.
結言
 拡張低次元化物理モデルを弾性車両のモデリングに用い,運動と振動の制御として有効なモデル化手法であるか検証した.シミュレーションと実験より以下のとおりの知見を得ることができた.
(1) 弾性車両という運動と振動の両方のモデル化を必要とする事例において拡張低次元化物理モデルは有効的な手法である.
(2) アクティブサスペンションを用いた弾性車両の運動と振動の制御としてH∞制御と準最適制御は,良好な制御結果を得ることができた.
(3) 本稿では,シンプルな形状をした弾性車両を模擬した実験装置を用いてシミュレーションと実験を行い,同者が良く一致することを確認した.それより,車体形状に即した複雑な構造でもFEM解析データから拡張低次元化物理モデルを用いてモデリングし制御可能である.