科目名 塑性力学特論I  

2単位

駿河台校舎

機械工学専攻  

前期課程  

前期  

クラス   

担当者 加藤保之 

 

学習目標

 応力がある値を越えると、一般にその一部または全部に永久歪(塑性歪)が生じ、これは、負荷を取り除くと残留する。このように、永久歪もしくは、永久変形を生じる性質が塑性であり、塑性を有する固体を連続体と仮定し、その力学的挙動を取り扱う学問分野が、塑性力学、または塑性学である。本講義では、塑性力学を学ぶ上で必要不可欠な重要な原理を中心に紹介していく。
 具体的には、以下の項目を習得していく。

  1) 単結晶と多結晶体の力学的性質の相違点
  2)
 単軸状態における塑性変形挙動の特徴
  3)
 塑性変形下の応力の表記法と歪の表記法
  4)
 降伏条件 
  5)
 塑性変形下の応力と歪の関係(構成方程式), 塑性流動則
  6)
 極限解析と上界法および下界法

授業形態
及び
授業方法

プリントを配布し、板書と少人数による輪講形式の講義の両方による。  

受講のための
予備知識

材料力学、弾性学など、固体力学の基礎知識を有する者。
 歪,応力などのテンソル表記,即ち、添字表記(Index notation)が使われるため、総和規約等の数学の予備知識が多少必要である。
 各講義が前回までの受講内容と関連するため、前回までの講義内容を十分に復習し、また、次の内容を把握(事前に配ったプリントを予習)した上で、次の講義を受ける必要がある。
 

 

授業計画

1

塑性力学特論Iで取り扱う講義内容の紹介、塑性力学特論Iの講義の進め方、受講の心構え、授業計画について、成績の評価方法などの講義概要の説明。
単結晶と多結晶体の力学的性質の相違点。 1)限界剪断応力、 2)辷り機構と転位、 3)単結晶の塑性変形、 4)多結晶体の塑性変形。 連続体力学における塑性力学の位置づけ(弾性と塑性・粘性について)。  

2

単軸状態での塑性変形挙動(その1 ):単軸引張や単軸圧縮から観察される塑性変形挙動の特徴。
1)応力−歪線図、 2)除荷、 3)再負荷、 4)ヒステリシス、 5)バウシンガー効果 

3

単軸状態での塑性変形挙動(その2 ):単軸引張や単軸圧縮から観察される塑性変形挙動の特徴の続き。
6) 圧縮試験、 7)非圧縮性。   塑性変形の基本モデル。 1)剛・完全塑性体、 2)弾・完全塑性体。 

4

単軸状態での塑性変形挙動(その3 ):塑性変形の基本モデルの続き。
3)弾・硬化体、 4)実験式と硬化係数 

5

単軸状態での塑性変形挙動(その4 ):摩擦抵抗とすべりの関係。
1)状態を定義する関係式、 2)変形の変化則を定義する関係式 

6

塑性変形における応力と歪の表示法(多軸負荷における表記)
1)偏差応力、偏差歪、静水圧力、 2)座標変換則、主応力、主軸、応力の不変量、 3)歪エネルギー増分 

7

等方性材料の降伏条件
1)初期降伏条件、降伏条件の客観性、 2)ミーゼスの降伏条件、 3)トレスカの降伏条件、
4)モアーの降伏条件、 

8

歪履歴と降伏条件、異方性材料の降伏条件
1)歪硬化と後続降伏応力、、 2)等方硬化則、移動硬化則、複合硬化則 3)異方性材料の降伏条件  

9

構造部材(棒部材ならびに板部材など)における降伏条件。
1)極限解析における降伏条件考え方、 2)軸力と曲げを受ける棒部材の降伏条件、 3)膜力と曲げを受ける板の降伏条件  

10

塑性変形下の応力と歪の関係(その1
等方性材料の構成方程式。  1)等方性材料の応力−歪方程式、 2)塑性流動則(法線則、放射則)  

11

塑性変形下の応力と歪の関係(その2
異方性材料の構成方程式。   1)塑性ポテンシャル理論、 2)異方性構成方程式 

12

極限解析と上界法および下界法(その1
定理と証明。   1)静力学的許容場、崩壊(塑性崩壊)の定義、 2)運動学的許容場、 3)下界定理と上界定理  

13

極限解析と上界法および下界法(その2
構造力学への応用1。     1)塑性ヒンジ、 2) 全塑性モーメント、 3)棒部材の例  

14

極限解析と上界法および下界法(その3
構造力学への応用2。 1)骨組み構造の例、 2)板部材の例 

15

講義全体の総まとめ、課題の解説  

 

その他

教科書

必要の都度プリントを配布する。 

参考書

R. Hill, The Oxford Engineering Science Series, The Mathematical Theory of Plasticity, Oxford, 1950. Sandor Kaliszky, Studies in Applied Mechanics 21, Plasticity ;Theory and Engineering Application, Elsevier, 1989. 山田 嘉昭 『塑性・粘弾性』 培風館 1980年 第1
 

成績評価基準

講義は輪講形式で行うので、輪講の際の発表状況とレポート点を総合し、100点満点で評価をす
る。 

質問への対応

質問は、下記の場所で随時受け付ける。質問や面会の予約可能(メールアドレスは、下記の通り

研究室又は連絡先

タワースコラ17階 S1717室(加藤研究室)、E-mail: kato@mech.cst.nihon-u.ac.jp 

学生へのメッセージ

この講義を通して論理的な思考法を学んでほしい。 

 

 


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