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研究の概要
 振動は一般に衝撃力や繰り返される力の変動による何らかの震動源により発生されますが,自然に発生する場合もあります。前者は,プレス機械や鍛造機械を稼働中に発生する振動,回転機械の不釣り合いによる振動,ブレーカーのような手持ち工具で打撃するときの振動,バットで球を打撃したときの痺れ,自動車や鉄道車両の走行が路面を励振する振動,地震による構造物の揺れ等々です。騒音も空気や壁の振動に伴う振動です。後者の例を代表するものに自励振動があります。近くに振動源がないのに揺れる旗竿や物干し竿,主塔構造物や超高層ビルの揺れ,この現象はそれら構造物の裏側で発生する渦の周期が構造物のもっとも振動し易い周期と一致したとき発生する渦励振と呼ばれる自励振動です。  これらの振動は機械の信頼性,精度,品質,寿命等を損なうばかりか,安全性,人体に与える振動障害や騒音公害等,様々な問題を引き起こしますので,古くからこの問題を解決したり軽減するためにいろいろな方法が講じられてましたが,最近の機械・装置,構造物はより軽量化,柔軟化する傾向にあり,より複雑な振動の抑制が求められるようになってきております。

 当研究室では,より柔軟で複雑な形態の構造物の振動を科学的に制御する研究を行ってきております。これらの構造物の振動を効果的に抑制するには,振動する相手の挙動や振動特性を正確に知らなければなりません。その上で振動制御装置を最適に設計するための方法論の構築が必要です。本研究室では,実験モード解析法と有限要素解析法を駆使して振動特性を正確に知った上で,複雑な柔軟構造物の非連成モデル作成法と低次元モデル作成法を確立しております。前者は多数の1自由度系モデルを作成し,各一自由度系ごとにパッシブ(受動的)制振装置を最適設計する方法です。後者は制御に必要な数の集中定数系モデルを作成し,制御理論を用いてアクティブ制振装置を最適設計する方法です。
 今までに,以上の方法を用いて沢山の構造物の振動制御に成功して来ましたが,簡単な具体例によって研究成果を紹介致します。図1は橋梁を通過するトラック自動車を示しております。トラックは上下に振動しながら橋梁を通過しますので,橋梁が振動しそれが地面に伝達されて,地盤振動を引き起こし人家に伝わることになります。橋梁は支柱で支えられた中央部分が最も大きく揺れますので,この揺れは中央部に動吸振器と呼ばれる制振装置を最適設計して取り付ければ良いことになります。図の振動を基本モードの振動と呼びますが,振動はこればかりでなくねじれモードの振動やさらに高次の振動モードがあります。本研究室で開発された方法を用いれば,必要と考えられる全ての振動モードを制御することが可能です。金属バットで下手に打撃すると手にしびれがきますね。図2のように振動モードの腹(振幅が最も大きい所)の付近で球を打撃すると激しい振動が手に伝わり痺れを感じます。そこで,動吸振器をグリップ端に最適設計して閉じこめれば,どこで打球を捉えてもしびれません。

 
 超高層ビルや長大橋の主塔は強風によって大きな揺れが発生することがあります。勿論,地震による振動で破壊することもあります。居住性や安全性を高めるには,建物の振動を制御することは大変重要な仕事です。  私の研究室では,図3にイラストで示しますようなビル同士の相互の作用を利用した振動制御法(ビル連結制振法)を提案し,アクティブ制御やパッシブする研究を行っております。この方法は大地震に対しての安全性を高めるのに有効です。幸いこの提案は受け入れられ,目下図4にようなビル連結制振法によって繋がれた3棟の高層ビルが晴海に建設中です。これは3つの高層ビルを2つの制御ブリッジと呼ばれる制振装置で繋ぐことによって,強風による揺れをアクティブに制御する世界最初の試みです。
宇宙構造物のような,軽くて柔軟な構造物も振動が問題になります。私の研究室はこのような問題の振動制御も得意にしております。図5は宇宙ステーションのイラストです。アンテナが揺れると地球と正確な通信ができませんね。そこで,太陽電池パドルの振動を制御することによって,この問題の解決する研究を行っております。 他にも,配管の振動,車の振動,情報機械の振動など様々な振動を止める研究を行っております。

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