振動センサの種類
  センサには測定する構造物に直接取り付ける形式のものと絶対固定に取り付ける形式の2種類に大別ができる.絶対固定面取付型には,ギャップセンサなどがあげられる.サイズモ系型センサとは前者の直接取り付ける形式のものを言う.   
絶対固定面系型
 制御対象物付近に絶対固定面が得られれば、その点を基準値として制御対象物のその振動が測定できる。しかし、現実問題として、絶対固定面型を使用することは不可能に近いため、本研究ではこのサイズモ系型を開発対象としている。
サイズモ系型
 サイズモ系型は,測定対象に固定された基礎枠と,この中中に取り付けられた内部質量とバネ要素,そして減衰要素から成る振動系を言う.基礎枠というのはバネの一部が固定されているベースまたはケースであり,ベースに振動が加えられたときのバネの他端に取り付けられた質量とベースとの間の相対変位が,振動入力に対する出力として得られる.これがサイズモ系型センサの測定原理である.サイズモ系は機械系であり,その出力である相対変位は長さのディメンジョンを持つ量である.
1)動電形振動センサ
 動電形センサは,ケースに磁気回路,おもりにコイルが固定されており,外力によりおもりが磁気回路中で胴体が磁束を切る方向に運動する時にそれぞれに直角な方向に運動の速度に比例した起電力が発生するという原理を用いた機械量―電気量の変換器である.また,コイルに負荷抵抗が接続されていると,発生した電圧はコイルを流れて電磁力となる.そしてサイズモ系から見ると,この形式は振動の速度振幅に比例する.負荷抵抗を小さくして,減衰比を小さくすれば,固有振動数を中心にその前後の振動数範囲で加速度振幅に比例する出力電圧も得ることができる.多くの動電形振動センサは,スピーカ磁石と同じ円筒形放射状時磁気回路を持つ磁気回路を使用し,その中を多層巻きのコイルが運動する構造となっている.一般的には磁石がケースに固定され,コイルがサイズモ系の可動質量となっている.
2)圧電形振動センサ
(a) 圧縮型 (b) 剪断型 (c) ビーム型
 圧電振動センサは圧電素子をバネ要素として使用したサイズモ系型センサである.圧電素子は,機械的ひずみを生じた際にそれに比例した電荷を生ずる.この変換素子をバネ要素として使用し,質量を組み合わせてサイズモ系を構成し,振動に対する電力出力を得る検出器である.この圧電素子を用いた圧電型センサは、構造が単純で高感度・高共振の加速度を測定が可能で、抵コストであることが特徴である。しかし素子のバネ定数が非常に高いので,超低周波信号を検出できないことと、チャージアンプが高価になってしまうという欠点が挙げられる。圧電センサは圧電素子の使い方によって圧縮型、剪断型(シェア型)、ビーム型(Flax)等に分類できる。
3)歪ゲージ形振動センサ
(a) 金属型 (b) 半導体型
 相対変位検出センサに歪みゲージを用いたサイズモ系型センサには,金属型、半導体型の二種類がある。金属型は金属抵抗線(銅−ニッケル合金)に張力が加わると抵抗線が伸びるため細くなり、その結果電気的抵抗値が増加することを応用している。小型・軽量で、測定できる周波数も直流(静的加速度)から数KHzまでと幅広く使用できる。しかし、感度が低いことが問題である。半導体型は、抵抗線の代わりにSi、Ge単結晶のピエゾ抵抗効果を利用し、加えられた力の変化によって検出する。半導体型は金属型に比べて感度が高いのだが、温度の影響を受けやすく温度補償を必要とする。
4)サーボ型加速度センサ
 サーボ型加速度センサは,小型かつ非常に精度が高い測定が可能なことから,近年振動測定や地震観測など幅広い分野で用いられている.このサーボ型加速度センサの構造は以下のようになっている.
このセンサの動作原理は,次の通りである.外部の運動または振動によって慣性力が作用し,内部質量に相対変位を生じると,変位検出部がそれを電気信号に変換し,増幅器で増幅され,変位に比例した電流が駆動部に加えられる.駆動部は内部質量を平衡位置に近いところまで戻して,慣性力と復元力が釣り合う状態となる.この釣り合わせる力を発生させる電流が加速度信号として得られる.通常は電流を付加抵抗に流して使いやすいレベルの電圧として取り出される.このような動作原理から,サーボ型加速度センサは力平衡型センサとも呼ばれている.サーボ型加速度センサは圧電型に比べて制度が高く低周波の現象にも対応する.サーボアンプを内臓しているため大きな出力が得られ温度安定性が良い.
 ここまではサイズモ系型センサの固有振動数以下で測定対象物の絶対加速度を検出する原理に基づいて開発された加速度センサについて述べてきた。しかし、アクティブ制御において必要とされている状態量は絶対変位・絶対速度であることは前にも述べたが、この絶対加速度センサでは、絶対変位を検出するためには二階積分が必要となる。検出信号には必ず誤差が含まれたり、また電気信号を利用していれば電気ノイズが信号にのってしまったりする。その信号を二階積分すれば誤差が大きくなってしまう。また、固有振動数付近で測定可能である速度センサは、加速度センサよりは、積分回数が少ないため変位信号の誤差は低減できるが、測定可能な周波数が限られてしまう。こういったことから、我々は直接に絶対変位を測定できるサイズモ系型変位センサに注目しているのである。
     
  速度・変位センサの開発P4