2.なぜ弾性車体を考えるのか?
 最近,自動車の性能は急速に向上している.環境問題に配慮した低燃費化・制御システムの向上に伴う新しいサスペンションシステムなどあります.そこで,我々は低燃費化のさらなる向上のために,車体の軽量化に注目した.
 しかし,軽量化された車両は,タイヤからの振動により弾性変形を引き起こす.車体の振動は,搭乗者に対する乗り心地や操縦安定性を損なう原因になる.振動だけでなく,車体の姿勢も乗り心地に強く影響する.これらの問題を改善するためには,車体の振動と運動の制御が必要になる.
 車両の姿勢・振動の制御は,オイルダンパー用いたパッシブ系のサスペンションが主である.しかし,パッシブ制御では振動制御の限界がある.そこで,我々はアクティブ制御に注目しました.アクティブに車体の振動を制御することにより,車体の軽量化・柔軟化によって引き起こされる柔軟振動をも制御可能であると考える.

自動車の性能向上 → 低燃費化・新サスペンションシステム
軽量化された車体 → 省エネルギ化・省資源化に貢献
柔軟振動が低周波で発生
乗り心地・操縦性へ悪影響
弾性車両として・・・

乗り心地+操縦性の向上を図る


 軽量化された車両つまり弾性車両は,ロボットや宇宙構造物のようなマルチボディシステムである.FEMモデルはマルチボディシステムの解析に有効的である.しかし,FEMモデルでは,多くの自由度を持ち,制御系設計が困難になる.単純な低次元化されたモデルは,柔軟マルチボディシステムの制御には,適しており,軽量加振台や除振台の運動と振動の制御などに応用されている.しかし,大変位,大回転を伴う運動制御には適さないので,著者らが提案しているマルチボディダイナミクスを取り入れている拡張低次元化物理モデルを適用することにした.拡張低次元化物理モデルは,実質量,実慣性モーメント,重心位置,運動量,角運動量を用いて設計されており,モデル化対象物の大移動,大回転を考慮している.振動の表現は,モード座標を用いている.さらに,運動と振動の連成についても表現している.
柔軟マルチボディシステムの運動方程式は一般的に非線形であるため,最適線形制御設計することは不可能である.よって拘束条件追加法より導出した運動方程式を線形化し,状態方程式に変換する必要がある.その手継を得て,MATLABのようなCAEを用いることで,簡単に制御系を設計することができる.

車両のモデル → 有限要素法解析(FEM)
自由度が多い
制御系設計が困難
新手法として・・・
必要とする自由度でモデル化
剛体的な挙動の運動と柔軟振動の表現
柔軟マルチボディダイナミクスを適用
↓
拡張低次元化物理モデル