研究テーマ詳細
空気タンク内圧を考慮した空気ばね式車体傾斜システムの目標傾斜角生成
研究の背景
曲線の多い路線において目的地までの列車の到達時間を短縮するためには曲線通過時の減速を抑えることが効果的です。曲線を高速で走行すると車両に遠心力が生じるため走行安全性と乗心地の確保のために軌道にはカントが設けられますが、停車時の転覆に対する安全性を確保する必要があり、その大きさには制限があります。そこで不足するカント量を、車体を曲線内側に傾けて補うのが車体傾斜装置です。近年では車体傾斜角度は2度程度と小さいものの、コストパフォーマンスの点で利点がある空気ばね式車体傾斜装置が多く利用されています。

空気ばね式車体傾斜装置の概要
空気ばね式車体傾斜装置は曲線に差し掛かると供給空気タンクから外軌側空気ばねに圧縮空気を供給して空気ばねを伸長させることで車体を傾斜させ、曲線区間を通過すると空気ばね内部の圧縮空気を排気することで車体を水平に戻します。したがって曲線が連続する路線を走行する場合には供給空気タンク内の圧縮空気の消費量が著しく大きくなり、コンプレッサによる圧縮空気の吸気が間に合わず、車体傾斜装置の運用が困難になる可能性があります。この問題を回避するための対策としてコンプレッサの高出力化や供給空気タンクの大容量化などハードウェア面での改良の検討が行われていますが、それにかかるコストや設置するスペースの確保は課題とされます。
動的計画法を用いた車体傾斜パターンの生成
これに対しソフトウェア面での対策として、あらかじめ設定された車体傾斜パターンを用いる代わりに、圧縮空気の消費状況やコンプレッサによる吸気タイミングなどの情報を元に車体傾斜パターンの車体傾斜角度を緩和させることで、車体傾斜装置としての性能を低下させつつも連続する路線を走行し続けられるような車体傾斜パターンを生成することを提案しています。
本研究では動的計画法を用いて以下の3点を考慮した車体傾斜パターンを生成します。
- 装置が運用し続けられる条件として、供給空気タンク内圧の値に下限値を設定
- 車体傾斜角度を緩和する曲線を曲線形状データより判断
- 供給空気タンク内圧の値に応じた、車体傾斜パターンの生成

動的計画法による最適化アルゴリズム
計算結果と妥当性の検討
供給空気タンク内圧の初期値を変更して生成した車体傾斜パターンの計算結果から、供給空気タンク内圧の制約を満たす範囲で車体傾斜パターンが生成されていることが確認されました。また、評価関数に超過遠心加速度を設定したことで、乗り心地に影響が大きい曲線(円曲線が長い曲線)での車体傾斜を優先した車体傾斜パターンが生成されました。

動的計画法を用いた計算結果
さらに、簡易的なモデルで生成した車体傾斜パターンの妥当性を検討するため、内軌側空気ばねを考慮した車両モデルを用いて車体傾斜シミュレーションを行いました。その結果、おおよその供給空気タンク内圧の傾向を考慮できるため、本研究における車体傾斜パターンの生成方法は有用であるものと期待できます。

内軌側空気ばねを考慮した車両モデルとの比較結果
主要な研究発表
- 藤井 浩也, 安藝 雅彦, 供給空気タンク内圧の制約値を考慮した空気ばね式車体傾斜装置の車体傾斜パターンの生成に関する検討, 日本機械学会論文集 91(951) 25-00023, 2025年11月25日 J-STAGE
