はじめに

今日、社会全体の傾向として、より高速かつ高精度な機械の開発により、商品等の大量生産が要求されている。その結果、これらに対するエネルギー及び資源の大量な確保が必要となり、環境破壊や環境汚染等の様々な環境問題が深刻化している。そして、その解決策として、消費エネルギーを少なくするための代替エネルギーや資源の有効利用等の多く方法が提案されている。そこで、我々の研究室では資源の有効利用を目的として、機械等を構成する構造物それ自身の重量を軽量化する方法に注目した。しかしながら、この方法では従来剛体として考えられていた構造物自体が剛性を失い、1つの柔軟体として考えなければならなくなり、また柔軟体が引き起こす振動の問題についても考慮する必要がある。そこで、我々の研究室では、その解析手法として、提案してきた低次元化物理モデルを高層ビルや橋梁、加振台等の柔軟構造物に適用し、その振動制御について有効性を確認してきた。このモデリングの特徴は、構造物のある特定の点での振動特性をバネ−マス系で表すことができ、したがって、複雑な構造物についても、このバネ−マス系により簡単に表現することができることである。 しかしながら、建築構造物のような絶対固定面に拘束された構造物だけでなく、システム全体が大回転のような大きな運動を行う場合、それ自体の運動が振動に及ぼす影響について、考慮する必要性がでてくる。そのため、従来の低次元化物理モデルによるモデリングにおいては、剛体モードとしてのシステム全体の運動が大きくなるに従い、システムを構成する柔軟体の運動と、剛体運動との間において幾何学的な非線形性が無視できないものとなる。 そこで、本研究では、構造物のある特定の点での振動特性をバネ−マス系で表すことができる低次元化物理モデルの特徴を活かし、さらに運動特性に関する条件を付加することにより、運動と振動を表すことができる、すなわち低次元化物理モデルを拡張した物理モデルを新たに提案した。また、適用する対象物として、フリーな状態である柔軟な平板について考え、この柔軟な平板に対し提案した拡張物理モデルを適用して、モデリングを行い、シミュレーション及び実機とのモデリングのマッチングにより、その有効性を確認した。また、このモデリングは、さまざまなものに対する適用できることが可能と考える。
1.はじめに           
2.なぜ弾性車体を考えるのか?   
3.どのように研究を進めているのか?
4.これからどうする?